犬の下痢の原因と対処法を徹底的に解説

下痢は症状を表す言葉で、その原因は様々です。食べ物、感染、腫瘍、その他のように原因は複数ありますが現れる症状は一様に「下痢」です。下痢はなぜ起こるのか?犬にはどのような病気があるのか?どのようにすればよいのか?について解説します。

犬の下痢とは?

いつも喜んでドッグフードを食べるのに今日はなんだか様子がおかしい?臭いをかぐけどそっぽを向いたり、半分残してしまった。どうしたのだろうと愛犬の様子を見ていたら、下痢になってしまった。このような経験をしたことはないですか?色々心当たりを考えると思います。
まず、下痢とは何なのでしょうか?下痢にはどのようなものがあるのかをみていきましょう。

犬が下痢の時に見られる症状

気が付いたら下痢をし始めていたということもありますが、なんとなく様子がおかしい?でも今のところ何の症状もない。このような時にどうすればよいのか迷います。下痢の時にはどのような症状が起こるのでしょうか?

よくある症状

このような症状が前兆として起こり、下痢になることが多いです。

では、下痢とはどのような便のことを言うのでしょうか?また、下痢にはどのような種類があるのでしょうか?

犬の下痢にもいろいろあります

下痢とは、健康時の便と比較して、非常に緩い粥状もしくは液体状の便が出る状態を言います。水分量の割合で、「軟便」・「泥状便」・「水様便」と分類します。他にも粘膜が混じったような「粘膜便(粘液便)」、血液が便の表面に付着したような「血便」、ドロドロとした真っ黒の便の「タール便」など一口に下痢と言っても様々な形状があります。
また、どのくらいの期間下痢が続いているかによって急性と慢性にわけることができ、発症から2週間以内のものを急性下痢症、発症してから2週間以上経過するが改善しないものを慢性下痢症といいます。

下痢の状態から下痢を起こしている犬の部位がわかる!?

便の状態や量を確認することで小腸が原因の下痢なのか、大腸が原因の下痢なのかの予測がつきます。

  大腸性 小腸性
便量 正常~増加 増加
嘔吐 なし あり
体重減少 まれ しばしば
未消化物 なし あり
粘膜便 あり まれ
血便 あり ほぼなし
タール便※1 なし あり
しぶり※2 あり なし

※1 タール便:上部消化管からの出血が消化され便として排出される状態で、血便の一種です。真っ黒の便が出るのが特徴です。

※2 しぶり:便意をもよおすのに便が出なかったり、出たとしても小量の便しか出ないのに何回も便意をもよおす状態。

以上の表のように下痢の状態や量、全身の状態で小腸が原因部位なのか、大腸が原因部位なのかを知ることができます。

どのぐらいの期間続く下痢なのかで原因を考えてみましょう

犬の下痢はその期間によって「急性下痢症」と「慢性下痢症」に分類できます。

① 急性下痢症

急性下痢症は下痢が起こった日から数えて2週間以内に良くなるものを言います。
これには感染性腸炎や薬剤による下痢が含まれます。感染性腸炎の原因になるのは「細菌・ウイルス・原虫・寄生虫」などが主なものになります。薬剤による下痢の原因になりやすいのは抗生剤です。

② 慢性下痢症

慢性下痢症は発症から2種間以上たつのに良化しない下痢のことを言います。
食物アレルギー、食物不耐性、炎症性腸炎、腸管以外に原因がある下痢などが当てはまります。腸管以外が原因になる下痢としては、糖尿病や腫瘍、甲状腺などの内分泌系の病気が考えられます。

下痢の形状別、様子を見てもよいか悪いかの判断方法

下痢には様々な形状があります。家で、下痢の状態を見て様子を見てもよいものか、急いで受診したほうが良いのかの判断の目安にしてください。

(1)軟便

通常の便は水分量が約70%ですが、軟便の場合は水分量が約80%になります。軟便の場合は便としてのかたちがありますが、柔らかく床に便が付着するような状態です。
このような便の場合は元気・食欲があれば1日様子を見ても構いません。次の日になっても同じ程度の軟便が続いている、またはさらに悪くなっている場合は必ず受診してください。

(2)泥状便

便の形状をとどめず泥のような状態で、軟便と水様便の中間の状態を示します。さらに進むと水様便になります。この場合は元気や食欲があっても必ず受診しましょう。

(3)水様便

便に含まれる水分量が90%以上の便で、便の形状は全くありません。腸の運動が過剰になることで消化物が早く通過し、腸内で水分吸収が十分できなくなります。この水分と未消化なままの食べ物が混じり排泄されるのが水様便です。この状態になると食欲や元気がない犬が多く、腹痛のためにうずくまってしまったり、嘔吐が起こることもあります。水分が吸収されずに排泄されてしまうので脱水が起こることもあります。必ず受診しましょう。

(4)血便

便の表面に鮮血が付着している状態を「血便」と言います。腸炎や肛門が切れてしまったことなどが原因になることが多いです。腸に腫瘍がある場合も血便になることがありますので長引く場合には検査が必要です。便自体は良便のこともありますし、下痢の場合もあります。元気や食欲があっても続く場合は必ず受診しましょう。

(5)タール便

タール便とは黒くてべとっとした便で、胃や小腸のように肛門から離れた部位で出血が起きている可能性が大きくなります。出血した血液は腸内細菌の作用でコールタールのように黒色に変色します。このような便が1回だけでなく続く場合や、毎日ではないが頻繁に出るのは異常です。消化管のどこかで出血が起こっている可能性が高いので必ず受診しましょう。貧血が起きていないかどうかも確認してください。貧血が進むと結膜の色や舌の色が白っぽいピンク色になりますので確認してください。

(6)粘膜便(粘液便)

便の表面に粘液が付着していたり、粘液だけが排泄されることがあります。このべちょべちょしたゼリー状のものは腸の粘膜細胞から分泌される粘液です。もともとこの粘液は、便がスムーズに排泄されるために分泌されています。他にも粘液が分泌されていることで腸を保護する働きもあります。腸の内壁が何らかの原因で傷ついたり炎症を起こすと、粘液がたくさん分泌され便と一緒に排泄されます。腸内環境が正常であれば過剰な粘液は分泌されませんので、様子を見ないで早めに受診しましょう。

≪様子を見てよい場合≫

軟便で元気も食欲もあり、次の日には普通便に戻った場合は様子を見ても大丈夫です。

≪受診したほうが良い場合≫

など

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ライフステージ別 気をつけたい犬の下痢の原因

下痢の原因はライフステージでかわることもあります。
年齢によっては命に係わる下痢もあります。

子犬の場合

子犬の場合気を付けたい下痢は、「パルボウイルス感染症」「コロナウイルス感染症」「寄生虫感染」です。特にパルボは激しい嘔吐と血様(ケチャップ様)の下痢が特徴で死亡率が非常に高い病気です。ワクチンで予防することができますが、それでも死亡率が高い病気であることに違いありません。他にも激しい下痢が続くと栄養不良から低血糖を起こす場合もあります。低血糖になると痙攣が起きることもありますので、子犬の下痢は絶対に様子を見てはいけません。

成犬の場合

成犬で気を付けたい下痢は「急性腸炎」「大腸炎」「抗生剤反応性腸症」「消化管のアレルギー」「膵外分泌不全」などです。急性腸炎や大腸炎は投薬でよくなることがありますが、他の腸炎は投薬でも改善があまり見られないことが多いので、2週間ほど投薬しても改善が見られない場合は精密検査に進んだほうが良いでしょう。

高齢犬の場合

高齢犬になると消化機能の低下、抵抗力の低下などから病気になりやすくなります。成犬の場合で挙げた病気にも気を付けなければなりませんが、「リンパ管拡張症」「炎症性腸炎」「腸管の腫瘍」などに気を付けるようにしてください。投薬を行ってもなかなか改善しないときには精密検査に進みましょう。

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動物病院を受診する。犬の下痢を正確に伝えるためには?

動物病院を受診するときになかなかうまく伝えられなくて困ったことはないですか?いつも食べているドッグフードの銘柄も急に思い出せなかったこともあると思います。
動物病院を受診するときに「準備すること」や「伝えたほうが良いこと」を知っておきましょう。

動物病院でよく聞かれること

下痢で動物病院にかかるときによく聞かれるのは、次のようなことです。

他にも下痢を起こした原因を探すために質問される場合がありますが、挙げた内容はよく聞かれますのであらかじめ考えておきましょう。

また、下痢が長引いている場合や下痢止めの薬を飲んでもよくならない場合は、腸管のアレルギーや糞便検査以外の検査を要する病気の可能性もあります。アレルギーを疑う場合は現在のドッグフードやおやつの銘柄やメーカーを聞かれる場合があります。病院へ行く前に外袋の写真を撮っておくと伝えやすいでしょう。

できるだけ新しい便を持参する

下痢の時に必ず行うのが糞便検査です。動物病院にかかるときにはビニール袋に入れて持参しましょう。
糞便検査に必要な便は、大人の親指程度の量があれば十分です。できるだけ新鮮な便を持参しましょう。糞便検査で様々な情報を得ることができます。
動物病院では糞便検査で以下のことを確認します。

≪形態を見る検査≫

≪顕微鏡を使う検査≫

≪その他≫

このように糞便検査では多くの情報を得ることができます。この中で、原虫類は便と共に排泄されて30分以内に観察しないと動かなくなります。時間がたてばたつほど検査で発見が困難になり、見落としの原因になります。病院にかかるときにはできるだけ新鮮な便を持参しましょう。体温を測るときに用いた体温計に付着した便や採便棒で採便して糞便検査はできますが、少ない量しか採れなかった場合は便を持って後日再診ということになることもあります。

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下痢を起こす病気  犬でよくおこる病気をリストアップ

犬の下痢の原因はたくさんありますが、その中でもよく起こる病気をリストアップしました。

①急性腸炎

急性腸炎とは、急性に発症し、腸に炎症を起こす疾患全般に用いられます。
一般的に発症から数日しかたっていないものを指します。

≪症状≫

下痢や軟便が一般的な症状で、粘膜便や血便を伴うこともあります。

≪原因≫

細菌やウイルス感染、誤食や食中毒なども原因になることがあります。

≪治療≫

急性腸炎の場合は対症療法(以下解説します)を行うことが多く、下痢だからと言ってすぐさま精密検査を行うことはほぼありません。ただし、対症療法を行っても良化しない場合は血液検査や消化管造影、内視鏡検査などを行い原因を探す必要があります。

1.食事療法

小腸性下痢については消化に負担をかけない低脂肪食、大腸性下痢については高繊維食が有効なこともあります。高脂肪食は避けてください。

2.輸液療法

急性下痢で脱水が認められる場合には点滴が有効です。

3.投薬

症状の程度によって投薬内容が変わりますが、「収斂剤」「乳酸菌製剤」「抗生剤」「消化酵素製剤」などを組み合わせ投与します。

収斂剤: 消化管粘膜に皮膜を形成し刺激を低減する働きがあります。

②大腸炎

大腸炎の原因には寄生虫性、感染性、炎症性腸疾患、内分泌性疾患など様々あります。大腸炎を起こすと何度も排便姿勢をとったり、過剰な粘液や鮮血を含む小量の便の排泄、しぶりなどが起こります。また、嘔吐も大腸炎を起こした犬の30%で見られます。

≪原因≫

原因の多くは寄生虫性、食事性、感染性であることから病歴や食事内容、糞便検査やその他一般身体検査を行い、その結果をもとに治療を行います。

≪治療≫

大腸炎の場合は対症療法(以下解説します)を行うことが多く、下痢だからと言ってすぐさま精密検査を行うことはほぼありません。ただし、対症療法を行っても良化しない場合は血液検査や消化管造影、内視鏡検査などを行い原因を探す必要があります。腸の組織を採取して病理検査を行う場合もあります。

1.食事療法

消化の良いドッグフードや可溶性繊維・不溶性繊維を多く含むドッグフードなどを利用します。原因が慢性腸炎の場合はアレルギー用のドッグフードを利用します。

2.投薬

症状の程度によって投薬内容が変わりますが、「止瀉薬」「乳酸菌製剤」「抗生剤」などを組み合わせ投与します。

③ウイルス性腸炎

犬で下痢を引き起こすウイルスで注意しなければならないのは「パルボウイルス感染症」と「コロナウイルス感染症」です。特にパルボウイルス感染症は死亡率が高く要注意です。

1.パルボウイルス感染症

≪原因≫

パルボウイルスの感染が原因になります。パルボウイルスに感染した犬が排泄した糞便などを経口摂取することで感染します。

≪症状≫

生後3~8週齢では心筋炎型が多く、8週齢以降では腸炎型が多くみられます。腸炎型の場合、激しい嘔吐とケチャップ様の下痢が特徴で、死亡率が高い病気です。

≪予防≫

ワクチンで予防できる病気なのでワクチン接種をお勧めします。

≪治療≫

輸液、抗生物質、抗ウイルス薬、制吐薬、タンパク補給(非経口)などを行います。伝染病なので他の犬から隔離し治療を行います。治療開始は早いほど予後が良く、遅れるほど予後は悪化します。

2.コロナウイルス感染症

犬コロナウイルス感染症は単独感染の時には死亡率が非常に低いのですが、パルボウイルスなどのほかのウイルス、細菌、寄生虫などと混合感染を起こすと重篤になる場合があります。

≪原因≫

コロナウイルスの感染が原因になります。コロナウイルスに感染した犬が排泄した糞便などを経口摂取することで感染します。

≪症状≫

主な症状は下痢ですが単独感染の場合は重症化することはまれです。ほかのウイルスや細菌、寄生虫などが同時に感染すると重症化することもあります。

≪予防≫

ワクチンで予防できる病気なのでワクチン接種をお勧めします。

≪治療≫

輸液、抗生物質、抗ウイルス薬、制吐薬、タンパク補給(非経口)などを行います。伝染病なので他の犬から隔離し治療を行います。治療開始は早いほど予後が良く、遅れるほど予後は悪化します。

④寄生虫性腸炎

寄生虫を土壌中や中間宿主などから取り込むことで下痢や嘔吐、栄養不良などの症状が起こります。

≪原因≫

寄生虫は「線虫類」「条虫類」「吸虫類」「原虫類」に分類され、それぞれの分類の中に数多くの寄生虫が存在します。寄生虫は垂直感染、経口感染、経皮感染など様々なルートで体内に侵入します。

≪症状≫

下痢や嘔吐、栄養不良の原因になり、寄生数が多い場合はその症状はさらにひどくなります。

≪治療≫

寄生虫の駆除薬は寄生虫の分類によって異なります。糞便検査をしっかり行い寄生虫の特定をした上で駆虫薬を投与するほうが確実です。

糞便検査を行い虫卵が見つからなくても寄生虫が体内にいないということにはなりません。体調が良い場合は寄生虫は腸管内におらず、皮下や脂肪組織内で眠ったような状態で存在することがあります。最近は寄生虫が糞便中から発見されなくても定期的に駆虫することが推奨されています。

⑤抗生剤反応性腸炎

抗生剤反応性腸炎はある特定の抗生剤に対して良好に反応する腸疾患ですが、原因は良くわかっていません。

≪原因≫

腸の運動低下、膵外分泌不全、胃酸分泌減少などが原因になって起こるといわれていますが詳細は不明です。

≪症状≫

全ての犬で起こる可能性があり、症状は下痢と体重減少が主なものです。ときには嘔吐も併発します。

≪治療≫

血液検査や糞便検査、画像診断で明らかに下痢を起こす原因が見つからず試験的に特定の抗生剤を投与した際に改善するかどうかを確認します。

治療に用いる抗生剤は「タイロシン」「メトロニダゾール」「オキシテトラサイクリン」のいずれかを用います。2週間以内に良化する場合が多く、休薬すると下痢が再発することが多いので休薬のタイミングは慎重に考える必要があります。

⑥腸リンパ管拡張症

腸や腸間膜などのリンパ節が異常に拡張した結果、腸の働きに異常が起こりタンパク質の吸収が低下し低タンパク血症を引き起こす病気です。

≪原因≫

腸の炎症や腫瘍によるリンパ管の閉塞、心疾患による循環血液量の減少などが原因になり、腸および腸間膜のリンパ管の圧力が上がります。このような状態になるとタンパク質や脂質などを豊富に含むリンパ液が腸管に漏れ出すようになります。

≪症状≫

下痢、激しい体重減少、腹水貯留、低タンパク血症 など

≪治療≫

1.食事療法

良質なタンパク質を含んだ超低脂肪食が基本になります。低脂肪の療法食がありますが、どうしても食べない場合はささみや低脂肪カッテージチーズ、ジャガイモなどを療法食に混ぜても良いでしょう。

2.投薬

食事のみで良化することは少ないので、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤などを投与します。
長期的な治療が必要になります。

⑦炎症性腸炎

炎症性腸疾患は胃、小腸、大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こし、慢性の下痢や嘔吐といった消化器症状を起こします。

≪原因≫

腸粘膜の免疫異常、遺伝、食事、腸内細菌などが複雑に絡んでいる状態と考えられていますが、正確な原因は不明です。

≪症状≫

慢性の消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少、血便、粘膜便など)が3週間以上続き、投薬や食事療法でも完全に良くならない状態です。免疫抑制剤に反応し消化器症状が軽減することも炎症性腸炎の特徴です。

≪治療≫

1.食事療法

炎症性腸炎用のドッグフードというものはありません。免疫が関係する病気なのでアレルギーに対応できるもので、消化がよく、中程度に脂肪が制限されているものが良いとされていますが、食事だけでは軽快は難しいとされています。

2.投薬

抗生剤や免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド剤で症状が軽減することもあるといわれています。また、乳酸菌製剤も有効な場合があります。

食事療法や投薬でコントロール可能な病気といわれていますが、完全に投薬治療を中止することは難しく生涯にわたって治療を継続することが必要な病気です。

⑧腸の腫瘍

腸の腫瘍は高齢の犬で発生率が高く、腫瘍全体の10%未満です。犬では腺ガン、リンパ腫、平滑筋腫瘍、肥満細胞腫などが発生しやすい腫瘍です。
食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢、血便、しぶり、便秘などの症状があります。腫瘍の種類によって治療方法が変わり、手術を行う場合もありますし抗がん剤が適応の場合もあります。腫瘍の中には予後の悪いものもありますので、なかなか良化しない消化器症状の場合は早めに検査を行うことが大切です。

⑨膵外分泌不全

膵臓から消化酵素が分泌されにくくなり、白っぽい脂の多い便が大量に出る病気です。食欲旺盛なのにやせていきます。

≪原因≫

膵臓から膵液という消化酵素が分泌されています。膵液は炭水化物を分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼが混じったものです。膵臓の萎縮や機能不全などが原因で消化酵素の分泌がだんだん少なくなり消化分解がうまくいかなくなります。

≪症状≫

便の色は白っぽく、脂っぽい脂肪便が出ます。便の量も排便回数も異常に多く、自分の便を食べてしまうこともあります。未消化な便が大量に出るため、栄養不良になり食欲旺盛なのにやせます。

≪治療≫

1.食事療法

消化酵素が不足し脂肪の分解が難しくなるので、低脂肪のドッグフードに変更します。
消化管への負担を軽減するために食事の回数を減らすことも効果があるといわれています。

2.投薬

膵臓の消化酵素が不足するので、消化酵素を食事のたびに投与します。消化酵素の働きを助けるために制酸剤を投与します。ビタミンB12が不足するのでビタミン剤を投与したり、抗生剤を投与することもあります。

膵臓の機能が回復することは難しいので、投薬治療と食事療法は一生継続します。

⑩食物アレルギーと食物不耐性

食物アレルギーも食物不耐性も症状は下痢です。しかし発生の過程が異なります。

≪原因≫

食物アレルギー

腸管は体内にある最大の免疫器官といわれています。食べたものが消化され排泄されるまでに消化管の中を必ず通ります。食べたものにアレルゲン(自分にとってのアレルギー物質のことをアレルゲンといいます)が含まれていると、腸管内でアレルギー反応が起こります。免疫反応が関係しています。

食物不耐性

消化管が受け付けない食べ物を食べたときに拒否反応がおこり排泄しようとします。乳糖不耐性が身近な例で、乳糖を分解する酵素を持っていない場合は牛乳を飲んだときに下痢を起こします。

≪症状≫

下痢や嘔吐が起こります

≪治療≫

アレルゲンとなる食物や受け付けない食べ物を特定して摂取しないようにすることが大切です。アレルゲンになる物質は血液検査を行うことで判明します。また、食べて下痢や嘔吐を引き起こした食べ物をリストにしておくことも大切です。

犬の腸を健康に保つためにはどうすればよいか?

食べたものは口から入り胃から腸を通り肛門から排泄されます。口から入るのは食べ物だけでなく細菌やウイルスなどの病原体も侵入します。消化管は栄養素を消化分解し吸収するだけでなく、侵入した病原体の侵入を食い止める役目もあります。腸は最大の免疫器官といわれています。

体内にある免疫細胞全体の約60%が腸内に存在し、体外から侵入してくる病原体と戦っています。腸内の免疫細胞を活性化することが免疫力を高めるポイントになります。腸がしっかり働くためには腸のためのエネルギー源が必要です。小腸のエネルギー源はグルタミンで、大腸のエネルギー源は腸内細菌が作る短鎖脂肪酸です。偏食になりおやつが主食になっている犬たちを時々見かけますがおやつでは腸に必要なエネルギーの原材料を作り出し供給することはできません。

また、腸の健康を保つためにはどのような腸内細菌叢なのかも重要です。腸内細菌叢とは、どのような腸の中に存在する細菌の種類のことで体内に生息する細菌の約90%が腸内にいるといわれています。しかし出生後初めて出た便の中には細菌はいないといわれていて、腸内細菌は生まれた後からどんどん増えていき腸内細菌叢が決定されるのは子犬の時までです。つまり基本の腸内細菌叢は子犬のときに決定され、生涯続くといわれています。子犬のとき(成長期)の食生活や環境が腸の基本を作りますので子犬のときに何を食べるのかは重要です。

下痢を起こした際の腸の組織を顕微鏡で観察すると、栄養素を吸収するために必要な腸絨毛がぼろぼろに剥がれ落ちてしまい壊れてしまっていることがわかります。体調の悪さから食べることができない日々が続くと、壊れた絨毛の回復がどんどん遅れさらに栄養状態が悪くなっていきます。下痢の状態から回復し始めたら腸の負担にならない栄養価の高いものをしっかり食べて回復に努めたほうが良いとされています。

腸の働きは自律神経がコントロールしています。何らかのストレスがかかると自律神経のうち交感神経が強く働くようになり腸の運動が活発になります。そのため下痢が起こりやすくなります。また、適度に運動することで、ストレス発散にもなりますが同時に新陳代謝も上がります。血管には心臓というポンプがあり血液を積極的に送り出してくれますが、リンパ管にはポンプがなく筋肉が動くことでリンパ管内のリンパ液が移動するようになっています。つまり、筋肉を動かさないと体の中の大切な流れが滞ることになり、最終的に様々な影響を与えるようになります。

腸の環境を健康に保つために大切なことは、「栄養バランスの整った食事をすること」「適量の運動をコンスタントに続けること」「ストレスに注意すること」が大切になります。

犬の下痢まとめ

下痢の原因は様々ですが、下痢止めや整腸剤で2週間以内に治れば、ドッグフードを変えたことや何らかの感染を受けた一過性のものだったということになります。しかし、投薬をしてもなかなか治らない慢性の下痢の場合は、フードを変えたり薬を変えながら様子を見るよりも積極的に検査を受けたほうが良い場合があります。時間がたてばたつほど病状はこじれ治療に時間がかかります。良便の基準は「バナナ型」で便を取り除いた後に便が付着しない硬さです。食べるものが変わっていないのに色や臭い、量、硬さに変化があれば動物病院で検便してもらいましょう。早期発見、早期治療が何よりも大切です。